羅臼岳(1,661M)登山:第2編


登山年月日 平成13年7月25日 小雨
メンバー 殿川紘史 (単独行)
主要ルート 岩尾別温泉駐車場(5:50)−>(7:15)弥三吉水ー>(8:05)銀冷水ー>(9:20)ラウス平=木下弥三吉翁のレリーフ(9:35)ー>岩清水ー>(10:35)羅臼岳山頂(11:20)ー>岩清水ー>木下弥三吉翁のレリーフー>(13:10)銀冷水ー>弥三吉水ー>(15:40)木下小屋=登山口・(16−17)<風呂:木下小屋>(17:30)−>(18:50)清岳荘(斜里岳登山口)駐車場(泊)
所要時間 9時間50分 <AM5:50−PM3:40>
全行動時間:13時間 <AM5:50−PM6:50>
              
             登山地図: 【羅臼岳登山路】

木下小屋
<岩尾別温泉登山口>


AM5時前に目覚めたが、やはり小雨・霧に包まれていたが、大雨でない限り、登山する決心で起き上がる。 しっかり「朝食」を摂って、傘も持参して、木下小屋の「阿久津氏」を訪ねた。 約束していた「予想以上に大きいおにぎり、2個入りの包みを受け取り、登山届に記入後、5時50分、登山開始。 開始早々樹林帯に入り、急坂が始まった。 2日間の休養した足も、雨で滑りやすい登山路は歩きにくかった。 誰も登山者を見かけない。 約1時間で平地となり「オホーツク展望」の良い地点だが、霧・小雨で視界は絶望的。 其の付近には「オトギリ」「マルバノイチヤクソウ」「エゾノヨツバムグラ」等の高山植物と巡り合う。 小雨を避けるプラスチックバックで覆ったカメラを出し、手持ちでの撮影は、予想以上に暗く、ISO感度を1600に設定しても「手ぶれ限界以下のシャッター速度」しか得られない。 其の覚悟で「ムリヤリ」に撮影(下山後に予想通りの手ぶれの画像を確認)。 「560m岩峰」を過ぎると「熊注意」の看板が有った。 阿久津氏は話した「熊野巣地帯」を通過中を知る。 兎に角「物音」(ベル・ホイッスル)を立てて、なるべく早く其の地域を脱出せよ!!のアドバイスを忠実に実行。 息を弾ませて無事通過。ダケカンバ地帯を過ぎると「弥三吉水」の標識。  登山ルート中で最も確実な「給水地点」だそうだ。 右手の木の下に豊富な水流があったが、「北海道の疫病:エピノコックス」を警戒して、全ての水(2.5L)は車から担ぎあげたので、給水の心配は無い。 テントも「3−5張」ほどのスペースもあった。  此処からやや平坦な道となる。 「極楽平」と命名されている。 「仙人坂」にさし掛かるとジグザグの急坂となる。 8時過ぎに「銀冷水」の標識点に到着。 小休止して霧の中の登山を継続する。 大沢の低部のガレ場を登る。 左右に、「エゾツツジ」の群落が見事だ。 「一の岩」「二の岩」を通過の時に、初めての登山者に追いついた。 4人組の中年女性だった。 4人のペースが遅いので、先行させてもらう。 急坂の最終点で、霧の中に下山して来た「大阪市在住の中年男性」とすれ違う。 羅臼岳山頂の情報を得たが、案の定「全く視界なし」「風もあり寒い」との悲観的の話だけで、急いで下山して行った。 直ぐハイマツが一面の「羅臼平」に到着。 右手に「羅臼岳(1661m)」、左手に「三ッ峰(1509m)」,正面は羅臼温泉からの登山口方面だが、何れも視界が無く真っ白の世界。 風は感じられない静けさだ。 

木下弥三吉翁ノレリーフ 羅臼平のハイマツ 岩清水の苔むした岩と清水

「羅臼平」と「木下弥三吉翁のレリーフ」がある広場で休憩。 「木下弥三吉翁」は羅臼岳登山史では、二人の功労者の一人だそうだ。 「羅臼町ー>羅臼岳」の登山ルートを開いた「西井諦誘」に対して、「岩尾別温泉登山口の木下小屋の建設と羅臼岳への登山道の開設者」とした功労者だ。 大正5年に登頂したとある。 羅臼岳は知床半島内の最高峰だが、最果ての地:知床だけに「登山の歴史」は古くない。 「彼のレリーフ」が岩に埋め込まれている。 高山植物を鋳込んだ背景に【知床を限りなく愛し これを友に惜しみなく預けた<木下弥三吉君>(1900〜1960)を記念して  北大山の会有志:1960】と刻まれている。 羅臼平には高山植物が咲いていた。 其のいくつかを撮影した。 「チシマクモマグサ」「ベニバナミネズオウ」「チョウノスケソウ」「イワヒゲ」「エゾノツガザクラ」「アオノツガザクラ」「イワブクロ」「イワギキョウ」等。 先程追い越した「4人の中年女性組」が追いつき、小休止後、約1時間の羅臼岳山頂には、一緒に登山することになった。 山形県から北海道へ登山旅行中だという。 9時35分、左折して、ハイマツの中の羅臼岳へのルートに入る。 10時頃、「岩清水」と呼ぶ「苔むした岩からした足り落ちる清水の水場」に到着。 山形組は絹糸のような細い水糸にコップ梳けて貯めて、飲み始めた。 参考までに「エピノコックス」の話をしたら、急遽中止した。 ハイマツ帯を過ぎて、いよいよ溶岩ドームの頂上部に差し掛かり、岩の隙間には「エゾノツガザクラ」「アオノツガザクラ」「チングルマ」の群生地になった。 約30分間の急な岩場をすり抜けると、待望の「羅臼岳山頂」に到着。 10時34分。 山頂は狭く、我々5人が揃って山頂の標識の側に座るスペースが無い。 残念だが「全く視界」が無い。 4人の記念写真を「頂上の標識を入れて」撮影。 風の影響もあり、自分の記念写真を女性に頼むには危険だと感じ、とうとう記念写真は撮影しなかった。 空腹を感じて、夫々に風を避けるために岩陰で昼食を食べ始めた。 木下小屋の阿久津氏手製の「大きい雑穀おにぎり」をほおばる。 米飯よりも硬いが「沢山の雑穀と焼いた鮭の細切」が混ぜられていてとても美味しい。 よく咀嚼しないと飲み込みにくい。 噛めば噛むほど味が出てくる美味しいオニギリを一度に全部食べてしまった。 山形組からは「甘い御菓子」の差し入れを受け、霧・低温・風にも拘らず「体温の上昇」を感じた。 周囲はガスで全く見えないが、360度の展望は素晴らしいらしい。 
「深田久弥」の4日間も羅臼村(当時)に待機して登山したが、我々と同様に全く視界が無かったと書いている。 その文章はガスが無かった時の景色の記述である。(羅臼山岳会で書かれた記事をお彼も引用) <以下に転載する>
【まず東を望むと足下に国後島が浮かび、その向こうに太平洋が拡がって、遠く千島の列島が見える。 南に向くと、知西別川上流の分水嶺のあたりに周囲五キロに及ぶ無名湖(羅臼湖と呼ぶ人もある)があって、その囲りに大小七つの沼が点在っしている。 この無名湖はクマザサやハイマツのジャングルに妨げられて、今までそこまで達した人はごく僅かだそうである。 西望すれば宇登呂港が眼下にあり、その先は茫々たるオホーツク海である。 北は既に述べたように三ツ峰から、硫黄山に向かう脊梁山脈が伸びている。】 〜以上〜
晴天時の写真を見ているだけに、誠に残念だが、知床半島〜知床峠を通過するのは今回で「4回」だが、一度も羅臼側や宇登呂港側からの展望で「羅臼岳」方面を見たことがない。 そのくらい「オホーツク海」に張り出している「知床半島」は東西の海の影響を受けやすく、すっきり晴れる時は極稀なのかもしれないと、諦めるしかない。 岩陰に身を寄せて、「ガスの晴れ間」を期待したが、45分間頂上に居て、終に諦めて、11時20分に下山する事になった。 
山頂標識の前での記念写真 山頂直下部の溶岩ドームでの下山 高度の低下で視界も良くなる

巨大な溶岩ドームからなる「羅臼岳山頂」の下りは大きい石の間を縫うように進む。 再び「岩清水」の苔むした岩と白糸の如き清水の美しさに見とれた。 羅臼平を12時に通過、 仙人坂までの大沢のルートは小石と雪渓の雪が混じり滑りやすかった。 雨は降らないが相変わらず、視界は悪い。 12時45分に銀冷水、 13時10分に弥三吉水を休憩せずに通過。 この頃から小雨が降り始めた。 傘をさひても歩ける状況で、ゴアーの雨具を着用せず。 山形からの4人は次々と「学校唱歌」・「流行歌」を歌い、時には「輪唱」も入る楽しい下山路を楽しませてもらった。 「560m岩峰」手前から「熊注意」の看板(写真左下2枚)が見え、一段と4人の歌声は高くなった。 熊も木陰で静かに聞いていたかもしれない。 ダケカンバ帯から混合樹林帯に入ると雨も多少強まり、粘土質の登山路には水が各所にたまり、大変すべり易くなった。 休憩場所も無い事もあって、「無休」での歩行が続く。 樹林帯のルートの下で「黄色の大きいキノコ群」を発見。 山形の4人は植物・キノコにも知識が豊富で「ヒグマが最も好むキノコ」だと知った。 登山口の近くの「祠」で安全登山が出来た事を感謝をささげて、15時40分、木下小屋に到着。 下山所要時間=4時間20分。  直ぐ「阿久津氏」に山頂と状態と美味かった「オニギリ」のお礼を述べた。 
ヒグマ出没多発地帯の看板に緊張!! ダケカンバの白と黒の樹皮 登山口近くの祠に感謝

山形の4人は「タクシー」で宇登呂経由で次の登山に向かうと言う。 山頂の記念写真を郵送のために「連絡先・メールアドレス」を交換して、単独登山ばかりで、無言の連続に反して、今回の下山時の楽しさに感謝した。 お互いの無事の帰宅を祈って別れた。 濡れた装備を車に収納して、入浴のために再度木下小屋の阿久津氏を訪問。 しばしおしゃべりをして「小屋の露天風呂」へ。 半分内湯・半分露天の綺麗な湯だった。 約1時間位阿久津氏と話し、明日の登山予定の「斜里岳登山口」へのルート情報を得た。  5時30分に岩尾別温泉駐車場を出発。 宇登呂港を経由して18時50分、ほぼ薄暗い中に斜里岳登山口の「清岳荘」駐車場に到着。 山小屋=清岳荘は火災で焼失後、現在の建物は「プレファブ形式の建物」だった。 ¥500の駐車料を納めた。 明日の天気が気になった。