市房山(1722m)〜二ッ岩
(1672m)縦走

 
登山年月日 平成16年5月11日(火)  快晴
登山メンバー 殿川紘史 (単独) 途中で4名のパーテイーに合流
主要登山ルート 【5/10】壱岐(14:30)−<フェリー>−>(15:30)呼子港(15:45)−>八代市ー>#219−>#388−>(23:20)市房山林道終点(車中泊)
【5/11】市房山林道終点(6:40)−>(7:00)市房神社(7:10)−>(7:45)#6合目ー>(9:00)市房山山頂(10:00)ー>「二ッ岩縦走コース」ー>(10:05)心見の橋(10:15)−>(11:15)第1縦走路分岐(11:25)ー>(13:00)二ッ岩(14:00)−>「第2縦走路」ー>(17:30)市房キャンプ場ー>(17:45)林道終点駐車場ー>(18:00)元湯温泉・入浴(18:45)−>#219−>人吉市ー>#221ー>(19:45)えびの高原(車中泊)
登山所要時間 登山:11時間05分 <6:40AM-5:45PM>  総合:13時間05分 <6:40AM-7:45PM>


     市房ダムから望む市房山

  <水上村発行の「熊本みずかみ」        より転載>



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市房山〜二ッ岩縦走ルートマップ

スライドショー:【第1編:市房山登山口〜山頂・周辺展望】 【第2編:市房山山頂〜二ッ岩縦走〜登山口】


【市房山の概要】
市房山(1722m)は熊本県・宮崎県の県境に聳え、その高さは熊本県の国見岳(1739m)に次ぐ県下第2の高峰である。 山麓に在る市房神社は「縁結びの神様」として古くから信仰されている。 その古い歴史が物語るように、神社の参道の両側は樹齢7−800年と推定される巨大な杉の大木で囲まれている。 山頂の展望は360度。 

【アプローチ】
2年前の九州地方山々の登山旅行で登らなかった「市房山」は今回の九州訪問後の登山では主要ターゲツトである。  5月5日〜10日午前まで故郷・壱岐に滞在した後、午後2時30分のフェリー(壱岐:印通寺港ー>佐賀:呼子港)で、九州に渡り、好天を選んでの九州内の登山旅行を再開した。 呼子港を4時前に出発して国道#203・#204・#208から九州の幹線国道#3を経由して熊本県八代市。 既に暗くなった#3号と分かれて、人吉市を目指して#219号に入る。 人吉市を過ぎて湯前町で#388号を取り午後10時も過ぎた頃、「市房山方面」の表示に従うが、途中で林道分岐に惑わされてルートミス。 登山地図・カーナビ・道路標識を見ながら、目的地の「市房山林道終点」到着を確信したのは林道の末端部で「林道終点・駐車場スペース」を見てからだった。 真夜中の林道走行は容易ではなかった。 完全な暗黒の駐車場は渓流の音以外は全く聞こえず不気味な程の静寂だった。 12時過ぎに夜食の「カップラーメン」を食べて、12時半頃就寝。 

【縦走記録】
昨夜の連続8時間の運転とルート探しで少し疲労が残り、5時起床のベルを無視して5時45分起床。 高密度の樹林帯に在る駐車場では、薄暗く霧があたりを覆っている様で、今日の天気が予測できないまま、6時20分に朝食を済ます。登山口のポスト内に「登山届」を入れて出発。 丸太の橋で渓流を渡った。 薄暗い登山道内の倒木に生えた苔が見事だった。 約10分で「市房高原キャンプ場登山口」からの道に合流して右に伸びる「市房神社参道」の階段状のルートを登る。 両側には驚くほど巨大な「杉」が続いて現れ、この市房神社の暦史が容易にわかる。 根回りは大人二人でも届かない位の大きさだ。 木の根と自然の石で出来た階段の諸所に白い花を付けたガクアジサイにそっくりの「ガクウツギ」が生えていた。 登ること20分で派手な色の「市房神社舎」に到着(4合目)。

鬱蒼とした市房神社駐車場登山口   苔生した倒木 参道の巨大な杉並木 参道沿いのガクウツギ 市房神社境内のツツジと登山注意の看板

派手な朱色の舎屋は「登山者の避難小屋」を兼ねているらしい。 その内部から「市房神社本殿」に通じる様だが、登山者は入れない。 常時は無人の神社のようだ。 境内には「登山者への注事項」と「九州中央山地国定公園」を記載した看板があり、境内の周囲に植え込まれた「純白のツツジ」がやや薄暗い境内では目立った存在だった。 派手な舎屋に比べて「本殿」は実に落ち着いた茶褐色の屋根と壁だった。 この神社が登山道の#4合目の記載が在る。 登山道は派手な舎屋の右を抜けて、左折して本殿裏手に通じていた。 此処から急な滑りやすい登山道が始まった。 7時20分頃、#5合目と#6合目の間に「ベンチ」が設置された所で小休止。 「市房山」の説明看板があった。 其れによると国指定の天然記念物「ゴイシツバメシジミチョウ」・「ツクシアケボノツツジ」の昆虫と固有植物が存在する貴重な原生林で頂上からの展望は「阿蘇」「霧島」「雲仙」も一望出来るとあった。 #6合目の馬の背を過ぎると、急勾配は続くが視界が良くなった。 樹林帯の間から、人吉盆地一帯は「霧」で覆われている様子が見えたが、5分毎にその霧が薄くなり消え去るのが手に取るように判った。 山頂で「霧に覆われた人吉盆地」は見れそうにない。 勾配が緩くなる8合目で先行する中高年らしい男性に追い付いたが、霧の風景写真撮影でまた先行して貰った。 9時ジャストに晴天の「市房山山頂(1722m)」に到着。 

派手な市房神社舎屋 落ち着いた市房神社舎屋と本殿の屋根 九州中央国定公園指定の「市房山」 八合目付近からの南方面の風景:霧島連峰 八合目付近からの西方の風景

春霞の影響はあるが、ガイドブックに記載の様に360度の展望は素晴らしい。 北部には「二ッ岩」までの縦走路になっている「花崗岩の痩せ尾根」が延び沢山の岩峰が連なる。 北東部は「国見岳」「阿蘇連山」「祖母山」の峰々が重なり、東部には平家落人伝説の里「米良荘」・「米良三山」の峰々、南西部には「湯山の里」・「市房ダム」「人吉の町」が展望される。 山頂には「1等三角点」を示す大きい石柱があり、側には幾つかの登山記念塔がある。 「心見の橋」「縦走コース」の表示も明瞭だ。 先行した男性(千葉県在住)は早くも軽食を終えて「心見の橋」(山頂から縦走コースの方角で3分の距離)に行くと言うので、同行することにした。 登山コースとは正反対の険しい下りルートを進むこと約100mで「心見の橋」と命名された「チョックストーン」に着いた。 岩の裂け目に「大きい石」が挟まり、上部を渡ることが出来、下の空間と上部からは西方の風景が見える不思議な所だった。 上部の石に乗った写真を撮ってもらい、5分間程度で頂上部に戻る。 

市房山山頂の記念写真 山頂からの展望:北東部<祖母山・傾山方面> 同左の拡大写真 同東部:日向方面 同南部:霧島連峰方面
人吉盆地の展望    湯山温泉郷方面    霧島連峰方面 二ッ岩方面縦走路の険しい岩峰の景観 心見の橋:チョークストーンの上下から西方を見る

9時40分頃に千葉在住の男性は今日中に熊本市内まで移動する予定の為に同じルートを下山して行った。 何時も経験することだが今日も山頂は「ハエ」「小昆虫」が多く落ち着かなかったが、早めの昼食(パン)を終え10時に第2縦走路に向かって出発。 再度「チョークストーン:心見の橋」を通過。 その周辺には市房山固有の「ツクシアケボノツツジ」が新緑の中に「ピンク色の花」を残していた。 祖母山や傾山で2年前に見た「アケボノツツジ」との違いはサッパリ判らない。 白い花の「ムシカリ」も数多く登山ルートに沿って諸所に見られた。

心見の橋付近の「ツクシアケボノツツジ」 縦走路沿いの純白の「ムシカリ」の花

「心見の橋」の近くに「キバナシャクナゲ」が咲き、ピンクのアケボノツツジといい対象をなしていた。 アケボノツツジよりも色が濃い「ミツバツツジ」もあった。 登山ルートは急勾配で鞍部まで続いた。

キバナシャクナゲ アケボノツツジと霧島連峰方面の展望 ムシカリの花 ミツバツツジとムシカリ アケボノツツジよりも濃い色のミツバツツジ

辺りは夏に白い花を付ける「コバイケイソウ」が茂り、立ち枯れした木々が多く見られた。 その一角に見た巨大な「サルノコシカケ」(左下写真)には驚いた。 「ブナ・ミズナラ」の黒い幹と新緑の緑のコントラストは見応えが在る。

巨大なサルノコシカケ 稜線に目立った「立ち枯れした樹木」 ブナの巨木:黒い幹と新緑

2つの小ピークを越えると、「第1縦走路」分岐点(1642m)に11時10分に到着。 見晴らしの良い大きい岩に登り、市房山山頂とその縦走ルートを振り返ることが出来た。 当初は第1縦走路で下山しようと考えていたが、ルートの崩落箇所・危険も多く、最近は殆ど利用者が居ないとの情報もあって、第2縦走路経由しか縦走ルートがない。 約10分休憩して思案の末、11時30分に第2縦走路経由の縦走を諦めて「市房山」へ戻るルートを選んだ。(この出会いが「市房山縦走」を忘れがたい山行にするとは思いもしなかった。) 11時40分頃、一つのピークを下った地点で「男女4人のパーティー」と出合った。 経験が深そうなそのリーダー(安楽氏)の「同行しませんか?」との勧めに乗って、1時間先の「二ッ岩」(1672m)経由で下山する決心をした。 このルートを取れば、下山後「1時間の林道歩き」が必要で、そのルートが不安だったが、合流すればその心配も皆無となった。 「1642mピーク」から「二ッ岩(1672m)」までは、幾つもの痩せ尾根とピークを超える必要があった。 4人は昼食を下山地点の「二ッ岩」で摂る計画で、休憩なしで前進した。 道中、この市房山のルート・九州の山々の登山・今年初夏のアルプスの100名山登山計画等話が出た。 最後の難関は「二ッ岩」直前の「約5mの一枚岩の登坂」だったが、ロープ・クサリが常設されていて全く危険はなかった。 3人の女性は力一杯の懸垂で此処を難なく登り切った。 「二ッ岩」は100m先にあった。

 新緑と木の実    キジムシロ       ムシカリ 「二ッ岩」直前の一枚岩の登坂光景

下山地点の「二ッ岩」到着は13時丁度だった。 空腹を抱えた4人は夫々の昼食を取り出した。 リーダーの安楽氏はバーナー・焼肉用金網をセットして持参した「調理済の肉類・魚肉・餅」を焼き始め、「ビスケット主体の行動食」を摂る小生に盛んに勧めてくれ、とうとう遠慮もほど程にして頂戴した。 女性3人からも「野菜・きゅうりの漬物」等・・・を。 登山談義に花を咲かせ、丁度1時間掛けた食事を済ませて出発準備完了後、全員で記念写真を撮影。 縦走ルートでの偶然の出会いだったが、親切なアドバイス・楽しい会話・美味しい昼食・・・とこんな素晴らしい出来事には「市房神社でのお祈り」の恩恵に感謝感激だった。 1時間前の出会いながら数年の知人関係の如く話が弾んだ。 登山での遭遇でしか経験出来ないことだろう。 14時丁度に「第2縦走路」を下り始めた。

余裕在る登坂? 二ッ岩での記念撮影:宮崎県から来た4人の親切なパーテイーの皆さん 第2縦走路下山路から見上げた「二ッ岩付近の岩峰群」

リーダーの安楽さん、金子さん、金丸さんそれに大河内さんとの会話を交しながらの下山路も、痩せ尾根・崩壊地・急勾配などでも気にならず、ルンルン気分で下り、杉林を過ぎて林道開始地点の堰堤の側で小休止。 振り返れば、「二ッ岩付近の花崗岩の岩峰群」が見えた(右下写真)。 実際に通過した時の感覚よりも厳しい岩峰に見えた。 堰堤の下の清流には中々いい形の「ヤマメ」が数匹泳いでいた。 釣竿を射す人も居ないのだろうか? 道中で見た「クマザサの花」・色素のない「ギンリョウソウ」・花の数で名前の変わる「ヒトリシズカ」「フタリシズカ」「サンニンシズカ」等々を撮影しながら長い舗装した林道歩きが始まる(花の数で名前が変わると教わったが三本の花でもフタリシズカと呼ぶのが正解らしい)。

クマザサの花:竹は花をつけると全部枯れる 下山路のブナの巨木 落ち葉から生えた「ギンリョウソウ ヒトリシズカ
フタリシズカ
サンニンシズカ
ヒメレンゲ
林道から見上げた「二ッ岩」への縦走路の岩峰群

林道の左右・頭上等目を配りながらも足はリズミカルに前進を続けた。 「綿毛をつけた木:ヤマヤナギ」から風でその綿毛が辺りに飛ぶ。 道路端の清流で第2回目の小休止。 全員顔・腕等を冷たい水で洗い口に含んで「美味い」と同じ声を上げた。「クリ畑」が始まった付近の道路端の草原で沢山の「ワラビ」を発見して、全員「ワラビ狩」を開始。 約15分位で、両手で掴む位の「ワラビ」を収穫して、「主人の酒の肴」が出来ると言う「3人の主婦像」が想像できた。 30分も歩いた頃、後を振り返ると「市房山麓」に続く傾斜地に植林された「杉林」が見事に手入れされ目を引かれた(写真下2枚)。

純白の綿毛を飛ばすヤマヤナギ 林道沿いの渓流で全員顔・腕を洗い冷たい水を存分に飲んだ 市房山南面の人工林:見事に管理された杉・杉・杉

大河内さんが膝の不具合を訴えていたので、林道を通過した2台目の作業車への乗車を頼み、全員約30分間の歩行時間を節約した。 親切なおじさんに登山口駐車場(キャンプ場付近)まで乗せてもらった。  安楽さんの好意で小生の車の駐車場(市房神社:林道終点)まで彼の車で運んでもらう。 登山装備を解いて先程の駐車場に行き4人と合流して、入浴の為に「湯山温泉」に向かう。 約11時間の縦走の汗を綺麗で安い(¥300)温泉で流した。 安楽さんと3人の好意は更に拡大して、今夜の宿泊地「えびの高原」に近い分岐点まで車で先導して頂き、「4人の暖かい親切」が「市房山縦走」を何時までも忘れることが出来ない登山にした。 今後、何処かの山での再会を願って「連絡先・電話番号」を手交して別れた。 宿泊地:えびの高原到着はどっぷりと暮れた午後7時45分だった。 2年前に駐車したベストポジションを確保。 定番の夕食+果物。 明日の「霧島連峰縦走+高千穂峰登山」のルート・時間配分を確認して就寝。 2年前と違い「晴天」のようだ。