大台ケ原:大杉谷下り:第2日<第1/3編>

駐車場〜日出ヶ岳〜粟谷小屋〜堂倉滝〜光滝〜七つ釜滝
〜桃の木小屋>


登山年月日 平成16年4月23日〜25日 快晴
メンバー 殿川紘史・ON氏
主要コース 【4/25】駐車場(7:45)−>(8:20)日出ヶ岳分岐(8:30)ー>(8:40)日出ヶ岳展望台(9:00)−>(9:40)シャクナゲ平ー>(10:55)粟谷小屋(11:05)−>(12:05)堂倉滝(12:55)ー>(13:40)光滝(13:50)ー>(14:40)七つ釜滝(15:05)−>(15:40)桃の木小屋(泊)
所要時間 合計:7時間55分  <AM7:45−PM3:40>

日出ヶ岳展望台から正木峠方面を望む
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【大台ケ原トレッキングマップ】 【大杉谷トレッキングマップ・概念図】 
【詳細地図:@AB】 【大杉谷森林生態系保護地域図】
スライドショー:【第2日・第1/3編@:大台ケ原駐車場〜日出ヶ岳展望台】
         【第2日・第1/3編A:日出ヶ岳展望台〜粟谷小屋】

【大台ケ原概要】
三重県・奈良県境界部に位置する「大台ケ原」の生成過程は、海底が隆起し、その後日本一の降雨によって周辺を削り取られて出来たのが、大台ケ原である。 大台ケ原は亜高山性の針葉樹と、ブナ、ミズナラ、カエデ類からなる原生林があり、一方では立ち枯れとササ原の晴れやかな草原部分もある。 この準平原の大地部分まで車窓から植生の変化を楽しみつつ登るのも良し。 森、渓谷、そして素晴らしい展望が待っている。
【大杉谷概要】
大杉谷は日本一の多雨地帯の「大台ケ原」から流れる水が削った厳しい渓谷の一つである。日出ヶ岳から南東に下って宮川ダム貯水池までの約10kmの渓谷で大杉谷登山道が整備されている。 大杉谷の原生林は海抜800mの七つ釜滝から下流域のシイ、カシ類を主とした温暖性常緑樹林帯、上流域のブナ、ミズナラを主とした冷温帯性落葉広葉樹林、日出ヶ岳(1695m)山頂部一帯のトウヒ、コメツガを主とした亜高山帯針葉樹林にくぶんされ、森林帯の垂直分布と、その変化を容易に観察することが出来る。 その豊富な森林帯には特有の動植物も繁茂しており、この「原生的な天然林及び動植物の保護」の為に『大杉谷森林生態系保護地域』が国有林に設定されている。 【添付マップ参照】
その国有林では森林をその役割に応じて、「水土保全」「森林と人との共生」「資源の循環利用」の3つのタイプに区分している。 大杉谷国有林は、原生状態に近い森林がまとまりを持っていることから、『森林と人の共生林』に区分され、特に重要と考えられる森林については『大杉谷森林生態系保護地域』に平成3年3月に指定された。 この保護地域は「保存地区」と「保全利用地区」の2つから成る。 保存地域(コアエリア)は原則として手付かずの状態で維持し、自然の推移に任せることとしており、、509Haが指定されている。 保全利用地区(バッファーゾーン)は、保全地区を取り囲んで、周囲の環境の変化が保存地区に及ばないようにすると共に、自然観察場としても利用可能な場所で、882Haが指定されている。 <林道内の近畿中国森林管理局・三重県森林管理署の看板より抜粋して記載>

大杉谷下り:第2日目・第1/3編<大台ケ原駐車場〜日出ヶ岳展望台〜粟谷小屋>

昨夜来の強風は納まり、肌寒さを感じる朝だが、天候は申し分ない空模様。 6時起床・7時朝食をシッカリ摂って、7時45分出発。 7時半頃に今夜の宿泊予定の「桃の木小屋」へ電話して「素泊まり2名」の予約をして安心。 快晴だが、気温は低く、長袖シャツでも動かないと寒い。 ビジターセンター前のルート表示看板で、「日出ガ岳」までルートを二人で確認。 暫く平坦な樹林帯を歩き、階段の勾配ある日当たりの良いルートに出た。 右手には落葉樹の中に「残雪」が幾つか観られた。 この一帯は「トウヒ」や「ウラジロモミ」等の針葉樹とミズナラ等の落葉樹が混ざった樹林帯が両側に在る。

大台ケ原駐車場〜日出ヶ岳展望台

大台ヶ原トレッキングコース図 大台ケ原樹林:トウヒとウラジロモミ 樹林間の残雪  日出ヶ岳分岐点から山頂を望む 分岐点展望台から東方を観る

8時20分、「日出ヶ岳」分岐点の展望台で小休止しながら、東側:太平洋側の「尾鷲湾」に浮かぶ小島や山並みを確認した。 4月下旬ではこの一帯の樹木はまだ冬の様相で、常緑樹の松類を覗くと全部「黒茶色の樹幹」だけである。 立派過ぎる「木道」が正木峠に続く。 8時40分、階段状の急坂を登り「日出ヶ岳(1695m)」の展望台に到着した。 列記とした日本百名山だが、登山した気分にはなれない百名山である。 ビジターセンター駐車場から40分間の歩行と高度差:100m程度が原因だろう。 

  
日出ガ岳へ急勾配の階段を登る 日出ガ岳展望台からの眺望と東方向の写真図

展望台からは360度の素晴らしい景色が見渡せた。 掲げられた「写真図」を観ながら、各ポイントの同定が容易に可能だった。 朝日がある太平洋方向は流石に霞んでいたが、熊野灘や尾鷲湾内周辺は全部見える。 写真図では「南アルプス」や「「富士山」も見えることになっていた。 

熊野灘と尾鷲湾方面 釈迦ヶ岳〜行者環岳〜金剛山方面の展望 西方向の写真図

日出ヶ岳西側展望写真図』によると、北側(右手)から「葛城山」「金剛山」「山上ヶ岳」「大普賢岳」「和佐又山」「行者還岳」「弥山(八経が岳)」「八剣山」「仏生ヶ岳」「釈迦ヶ岳」「大日岳」「天狗山」等が10座以上に横並びに見えた。 大阪在住のON氏が頻繁に訪れる『大峰山系』について詳しく説明を加えてくれた。

正木峠〜正木ヶ原方面のトウヒの散在する森と立ち枯れの混生 先端の鋭い行者環岳

 大峰山系は厳しい岩山が多く、修業の場としては申し分ないことを覗わせる稜線の凹凸が見える。 「大杉谷」を終えたら、次の登山ターゲットが幾つも見えた。 計画は「大峰山」「八経ヶ岳・弥山」「大普賢岳縦走」「行者環岳」「釈迦ヶ岳」等である。

大日岳 大日岳と釈迦ヶ岳 尾鷲湾 熊雄灘

南側は『東大台ケ原方面』で「正木ヶ原」の足し枯れの木々と松類【トオヒ】との混合林である様子が判った。 松の濃い緑以外は全部茶色一色だ。 目立つのは「立ち枯木」だけで非常に殺風気な景色だった。 一人のハイカーが展望台に登ってきた。 今日は「大台ケ原」とトレッキングする予定らしい。 

正木峠〜正木ヶ原から尾鷲辻方面 トウヒの混じる林 手前は立ち枯れの木 トウヒと大峰山系

日出ヶ岳展望台〜粟谷小屋

9時直前に展望台を降りて『大杉谷』方面の看板でルート・注意事項を確認した。 危険箇所が幾つかあって、その注意事項や、装備・天候急変対応などがあった。 自然と渓谷美が堪能できるコースとして有名になって、大勢が気楽に訪れる事から事故が起こるようだ。 「日出ヶ岳〜粟谷小屋」間が約3時間、 「粟谷小屋〜桃の木小屋」間が3時間10分の標準タイムがあった。 9時出発で午後3時過ぎには宿泊予定の小屋に到着出来る。 余裕の第2日目だ。

駐車場〜桃の木小屋までのルートマップ 山頂からの南東斜面のミズナラ・シナノキ類 自然放置お倒木 山頂を見上げる・此処を鹿が闊歩した

緩い勾配を下り始めた時に「2頭の鹿」が眼前を左から右に横切り、20m位離れて二人を覗いながら、何か食べ始めた。 日中から身近に見える鹿は、年々数が増えて食害問題を引き起こしている。 「トオヒ」の樹皮は鹿の好物らしい。 以前は食料の不足する冬季間で発生しているとの通説が最近かわり、それ以外の時期にも食べているらしいと言う。 この一帯は「ミズナラ」が主体に見えたが、立ち枯れや倒木が自然の成り行きに任せて放置されている樹皮には「苔」が着いたものもあった。 「シャクナゲ平」下る両側には、風で倒れた大きい木が多々あり、一様に大きく広がった根を全面に露出して倒れたり、傾いていた。 殆どが根の深さは50cm程度と驚くほど浅い。 風で簡単に倒れるのは深く根を張れない地質の様だ。 屋久島の倒木も表土の直下はすぐ花崗岩で、その境界で簡単に剥離する様だった。

自然放置の倒木には苔が生え始める 数十メートルの木々が風で倒れた様子:全部根元から

名前の通り、「シャクナゲ」がルートの両側に生えていたが、蕾は滅多に見れなかった。 独特の葉をヤヤ下に下げた艶のある細長い葉が美しい。 90度角度を変えて空中に露出した樹根は徐々に風化して見事な造形に変わる。

シャクナゲの木々 ミネコシ:木の根のみが残る造形 シャクナゲ平とコバイケイソウの新芽

シャクナゲ平と9時40分通過後、木陰で給水・休憩を取る。 長いシャクナゲ坂を下ると、「粟谷小屋」と「堂倉避難小屋」の分岐に差し掛かり、左の「粟谷小屋」の方を選択した。 10時55分、一般車通行禁止の「大台林道」に出て、左方向200mで立派な赤茶色の「粟谷小屋」に出た。 直前左手の沢の近くに「延命水」と書いた「水飲み場」があったが、全く水の出た形跡はない位乾燥していた。 一方、小屋の前まで引かれたパイプからは豊富な清水がふんだんに溢れていたのと対象的だ。 

シャクナゲ平の落葉樹群 枯れた延命水 粟谷小屋 森林生態系保護地域図

11時05分、また少し戻って、車道に沿って2−300m進み、左手のルート表示看板を見てルートを再確認した。 「大台ケ原と大杉谷」を中心とする国有林は「大杉谷森林生態系保護地域」に指定され、その地域の詳細が色分けされて「コアー地帯(509ha)」と「緩衝地帯(882ha)」に別けられていた。 <右上の写真参照

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