宮之浦岳縦走第3日目
 <宮之浦岳直下ビバーク地点 −>高塚小屋>

登山年月日 平成14年4月12日  快晴
登山メンバー 殿川紘史  (単独行)
主要ルート 平石(ビバーク地点)(7:30)―>(7:45)焼野三叉路(8:10)
ー>宮之浦岳山頂
(9:50)ー>焼野三叉路(10:00)ー>(10:10)平石(10:35)ー>
(12:00)
第二展望台ー>(12:20)第一展望台―>(13:00)新高塚小屋(13:40)―>
(15:00)高塚小屋(泊)
所要時間 7時間30分  <AM7:30−PM3:00>

宮之浦岳山頂から望む:永田岳西稜と背後の国割岳

「風の凄まじい音」に恐怖感も感じながらーーー。 気が付いたら辺りが「薄明るく」なった。少しは仮眠出来たようだ。 
雨は止み、強風も幾分収まりつつある。 天気予報通り。 6時起床。 ツエルトの外はもう明るい。


 < 平石のビバーク地点から寒冷前線一過の朝日 >

丁度,日の出直後で雲間から陽光がまぶしい。 6時30分に外に出る。 ツエルト他全部収納せず、そのままで写真撮影開始。 外部放置のザック・ゴアーの雨具の雨粒は全部綺麗に水玉状に「氷結」。 手の冷たさ・悴み具合から「外気温=マイナス数度以下」であろう。 更に風速を考慮すれば体感温度はそれ以下だ。 スパッツはバリバリと音を立てる位に氷結。 ビバーク地点での撮影を一通り終えて、チェルトと炊事用具をサックに収納完了してこれから、宮之浦岳山頂に立って見たい。

ビバーク地点からの展望: 東方(左)・宮之浦岳北稜面(中央)・西方稜(右)

時刻:7時20分。写真撮影の為に、朝食前に「宮之浦岳」にサブザックでの登山を決定。 焼野三叉路に到着。 昨日と同じ場所から「永田岳」がくっきりと直ぐ側に見える。 距離は1.5キロ。 昨日は永田岳の方向が視界にない為に随分困ったのがウソの様だ。 色んな角度から「永田岳」「宮之浦岳」「ビバーク地点」の各方向の写真を撮影。 低温の為に手が悴んで直ぐ感覚が無くなってしまう。

<焼野三叉路地点の展望:永田岳> <宮之浦岳からの展望:南方(中央)・永田岳と国割岳(右)>

8時10分に素晴らしい展望の宮之浦山頂着。 風は強く酷く冷たい。 写真機を支える手の感覚が鈍る。 見る間に雲が切れ快晴に変わる。 360度の展望の中に昨日方向同定に苦労した「永田岳」がウソのように眼前に見える。

< 宮之浦岳山頂の展望:南西方向 >

例えようのない「展望と風景」に繰り返しシャッターを押える。 刻々と状況が変わり何度みても飽きる事はない!! ビバーク地点に残したザックもごま粒のように見える。 昨日の「ビバーク決断の正しさ」を確信する。 選択した場所も宮之浦岳への再登山には格好の位置だった。

<ビバーク地点:中央の白い広場> <永田岳:北稜(ネマチ・小障子?> <黒味岳?・西黒味岳??>
<雲に覆われた国割岳>@ <雲が晴れ始めた国割岳> <雲が晴れた国割岳>
< 永田岳:西稜線 > < 黒味岳?? >  < 宮之浦岳頂上にて >

         
もし「新高塚小屋」まで行けばこの光景は見ていない。 北北西の方向に海岸線が見える(宮之浦岳からは海は見えないと信じていたので驚く発見)。  栗生岳や翁岳の裾野には大きい岩が草原に転がり、庭園の見事な置石に見える。 黒味岳等々が遠くまで見え、屋久島の山々の奥の深さに驚かされる。 大雪山の真ん中にいる様な感じさえする。 花崗岩・熊笹の配置・ダイナミックに絶えず動いて形を変える雲との組み合わせ・立体感に夢中で、百枚以上を撮影。 焼野三叉路に一人の登山者。 頂上で再会して昨日別れた若者だった。 鹿野沢小屋は唯一人だったようだ。 昨夜の雨と覆い被さる熊笹で雨具を通して全身ずぶぬれで可愛そう。 約100分間も山頂に滞在した9時50分下山開始し、ビバーク地点に向う。
         
<永田岳と国割岳の望遠> <永田岳頂上のクローズアップ> <永田岳と焼野三叉路>
 < 永田岳の頂上部 > <宮之浦岳から見たビバーク地点>
<平石からの展望> 宮之浦岳(左)・宮之浦岳頂上部のクローズアップ(中央)・栗生岳?・翁岳?(右)

  
10時10分ビバーク地点着。 暖かい朝食を済ましてリパッキング。 10時35分第二展望台に向う。 少し歩くと「平岩」の標識で、大きい岩屋がある。 ここならもう少し安眠出来たかもしれないがツエルト固定用の支柱はないからやはり「あのビバーク場所」がベストだろう。11時30分、「坊主岩」や「枯死した屋久杉」の見える平坦地で30分休憩。 其処から見る「永田岳」の稜線が東側に長く延びる

<平石付近から永田岳を望む>  <第二展望台付近からの永田岳> <白骨化した屋久杉群>

  
標識板の位置関係 新高塚小屋:1.4km・縄文杉:3.3km。淀川小屋:8.6km・宮之浦岳:2.1km。12時:第二展望台、 12時20分:第一展望台、天候がよく景色のよさもあって撮影時間が長く前進速度が極端に遅い。 13時:新高塚小屋着。 小屋には誰もいない。 大きい小屋の周辺は立派な木製デッキが有り、手入れもよく宿泊には水場も近く快適そうだ。小屋から50m離れたトイレまではデッキに沿って「ロープ」は張ってある。 「濃霧によるルート確保(トイレまで)」のためだろう。(後で聞いた話:数年前、濃霧の夜中トイレに出た女性が行方不明にーー)。  屋久島の1000m以上の山中での「濃霧の凄さ」を少し想像出来、その対策も頷ける。 余りの太陽光線の暖かさに真新しいデッキでゴゴネして暫し休憩。 今日は高塚小屋泊まりで十分な余裕がある

<ビャクシン岩(坊主岩)> < 平石付近 > <倒壊した巨木の根>
<ヒメシャラの林> < 新高塚小屋 > <ヤクシカ:高塚小屋にて>

40分も休憩した13時40分:新高塚小屋出発、15時:高塚小屋着。 この小屋は小さいが「縄文杉」から近く水場からも左程遠くなく良いロケーションにある。 「ヤクシカ」二頭がゆっくりと餌を取りながら歩き去った。 人を恐れる気配なし。 まだ登山者は数人のみだが、今夜の込み具合を予想して小屋の一角を確保後、10分下って水汲みと「縄文杉」の撮影に出る。 観光客のいない「縄文杉」観覧用デッキで暫し大木の写真をありとあらゆる角度から撮影。 夕方の為太陽光に恵まれず途中で中止。 16時小屋に戻り「雨で濡れた雨具、シート等」を風乾する。 17時―18時:「定番の夕食」+味噌汁+コーヒー。 同宿舎は10数人と思ったが、シュラフに潜った後の18時30分頃、20人の大グループが到着。 スペース確保で皆起き上がる。  上下階に詰め合わせて、6−7人位追加、後は外でテント泊で全て解決だが、大グループで暗くなってからの到着とは非常識。 その夜、いろんな種類の「鼾」でまた安眠を妨げられた。 山小屋泊まりの宿命かーーー。  総歩数=11,900歩で所要時間=4時間30分はルート標準時間より100分も掛けた事になる。